Braid 考察 -1- Braidのストーリー読解

  • 2012/06/18 特集

最大の問題点は、自分が正しいことやってると思ってるのに、
正しくなくなるんだよ、人というのは。
自分がちゃんとやってるつもりだったのが、いつの間にか、ねじ曲がったりするんだよ。
– 宮崎駿 –

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まずは、ストーリーから

前の記事で書いた、「読み解きの流れ」は、こうでした。
1.「ストーリー」を正しく理解し、そこから「テーマ」を推測する。
2.「テーマ」と、他の諸要素の「寓意」が矛盾しないかを確かめつつ、テーマ解釈を掘り下げる。

と言うことで、
今回の記事では、「1」にあたる「ストーリー読み解き」について、書いていきたいと思います。

Braidのストーリーは、ややこしい

「『Braid』はやや難解だ」といいましたが、難度を高めている原因は、はっきりしています。
ストーリー構造が「ややこしい」のです。

通常、物語作品には、一つのストーリーしかありませんが、
Braidでは、複数のストーリーが「混在」しています。

高度なノベルゲームのように、
「同時並列的」に、複数のストーリーが走っているだけならまだしも、
『Braid』では、別々のストーリー要素が、点在し、混然とからみ合っているので、
順序立ててストーリーラインを追う事が、難しくなっているのです。

さて、その「ややこしさ」、
言うまでもないですが、悪意によるものではありません。

私は、ストーリーを、バラバラに「混在」させたのは、「理由」がある、と考えています。

それは、どういう事でしょうか。

順番に、説明していきましょう。

テキスト(文字情報)から、ストーリーの軸を探す

ではまずは、Braidのストーリーを理解するために、
ゲーム中に得られるテキスト情報から確認していきます。

今回の考察記事は、既プレイの方を対象としていますし、
以下のサイトにテキストが全文乗っていますので、ここでは必要な箇所のみの引用にとどめます。
必要であれば、こちらをご確認ください。→『Braidテキスト全文

さて、すべてのテキストを、ざっと読んでみると、
ぼんやりとですが、以下の様なストーリーの軸が見えてきますね。

・プリンセス(彼女)を守ろうと頑張る少年

「少年は少女を呼びよせて手をとると、ついてくるように言った。僕が君を守るから。」


・プリンセス(理想郷)を求めて技術の発展に没頭する科学者

「定規とコンパスを駆使して、彼は頭をひねった。
リンゴが落ちる様子や、糸に吊るした金属製の球がねじれる様子をじっと観察した。」

しっくりこない感じがするかもしれませんが、ご心配なく。

ここでは、
「なんとなく2つの軸がある……かな?」ということだけがわかれば、問題ありません。

なぜかと言うと、先に書いたように、『Braid』のストーリーは「混在」していて、
センテンスごとに、明確に別れていないからです。

はじめは大きくとらえ、整合性を確認しながら、じょじょに、細かい考察に入っていきましょう。

そうしないと、混乱しますからね(私が)。

「目には見えない」もう一つの、ストーリー軸

さて、テキスト上から読み解けるストーリー軸が、2つ明らかになりました。

さらにもう一つ、忘れてはならないストーリーの軸があります。
それはプレーヤーのゲーム体験が紡ぐストーリーです。

3つ目のストーリーは、
・プリンセス(姫)を探し、悪者から助け出そうとするプレーヤー(ゲームプレイが生むストーリー)
です。

「む?でも、それは少年が女の子を守ろうとする話と、同じじゃない?」
と思われる方も、いるかも知れませんね。

先述のとおり、ストーリーが「混在」しているので、ややこしい所なのですが、
以下に、「ゲーム体験ストーリー」と、「テキストのストーリー」が異なると判断した理由を、
2つあげたいと思います。

まず、
ゲーム上のプリンセス(姫)は、終盤、「明らかにこちらを殺しにきている」のに対して、
テキスト上のプリンセス(彼女)は、「内心は嫌がっていた」という、「色恋沙汰のレベル」である事。
(プリンセスの反応が異なっている)

次に、
テキスト上の世界には、現実世界のように「映画館」、「明るいひろばに面したカフェ」との記述があるが、
ゲームプレイ上の世界には、「鎧の男」が出てきたりと、明らかに「中世ヨーロッパ(ファンタジー)的」である事。
(世界観が、かみ合わない)

以上の理由から、
「ゲーム体験ストーリー」と、「テキストのストーリー」は、「完全に同じとは言えない」、
つまり、「別軸である」と考えるのが妥当だと、私は結論付けました。

3つの混在するストーリーから、寓意を読み解く

さて、混然としたなかから、なんとなく、ストーリーの軸が、見えてきました。
ここからは、すでに明らかになった、3つのストーリーから、寓意を読み解いていきましょう。

現時点でわかっているストーリー(軸)は、以下の3つです
・プリンセス(彼女)を守ろうと、せいいっぱい頑張る少年
・プリンセス(理想郷)を求めて、科学の発展に没頭する科学者
・プリンセス(姫)を探し、悪者から助け出そうとするプレーヤー(ゲームプレイが生むストーリー)

さて、これらの「混在ストーリー」を、どのようにとらえて、理解すればいいのでしょうか。

一般的に、テーマを読み解くには、まず、
そのストーリー上の主人公(達)が、物語を通して、どう変化したのか(あるいはしなかったのか)
に着目すると良い
、と言われています。

その理由は、
作家が、物語になんらかのテーマを持たせる場合、
まずは主人公を通して、テーマを描こうとするからです。
なぜなら、お客様の目に、一番多く触れるのは、基本的に、主人公だからです。

テーマの手がかりを得るために、まず、「主人公がどうなったか」を見ます。

3つのストーリーは、「どうなったか」

では、テーマを推測するために、
3つのストーリーの「主人公」が、「どうなったか」を考えてみましょう。

細かな解説は、後日の記事にまわしますが、
それぞれのストーリーは、結果的に、以下のようになりました。

・少年は、プリンセス(彼女)を守ろうしていたが、逆に、嫌がられていた
・科学者は、プリンセス(理想郷)を求めたが、「クソったれ」になってしまった
・プレーヤーは、プリンセス(姫)を悪者から助け出そうとしたが、悪者は自分(プレーヤー)だった

ここから読み解ける寓意はなんでしょうか?

察しがいい方なら、すでにおわかりですね。

わからない方は、タイトルを思い出してください。
そこに、ストーリをとらえるための、ヒントがあります。

「Braid(みつあみ)」

このゲームのタイトルは、『Braid(みつあみ)』です。

では、「3つのストーリー」を、「一つのものとして」とらえてみましょう。
すると、以下のような、「同じ意味をもった1つのお話」として、解釈することが可能になります。

「良かれと思って進んでいたのに、間違っていた」お話。

つまり、Braidの「ストーリー」は、「そのような事に、気をつけなさい」という、
「警告の寓話(寓意をもったお話)」だと読めるわけです。

そして、「考察 -0- はじめに」ですでに述べたとおり、
この「警告」こそが、『Braid』のテーマの根幹をなすものだと、私は考えます。

さて、1つ、疑問が解消されていませんね。
なぜ、ストーリーを混在させて、こんなに「ややこしく」したのか。

その理由は、なんでしょうか。

ストーリーを「混在」させた理由

『Braid』は、軸となるテーマに、ストーリーを重ねあわせて、
「編みこむ(braid)」事により、その作品としての強度を、高めています。

ストーリーを、「混在」させていたのは、端的に言って、このためです。

テーマに対して、意味を重ね、編みこむ事、つまり「重層化」させていく手法は、
現代アートや、優れた映画などで、よく見られるテクニックで、
私が『Braid』を狭義の「アート」として評価するのは、そういった部分の完成度の高さからです。

さて、是非はともかくとして、「意味の重層化」においては、
「コンテクスト(歴史的な文脈)」を取り入れる事が大切だ、と言われます。

実は、『Braid』は、その点においても、見事に「答えている」作品なのですが……
今回は長くなりましたので、その辺りは、次回に書くことにしましょう。

次回予告

今回の記事では、
「混在」する3つのストーリーを、Braid(三つ編み)のように1つのものとしてとらえ、
「正しいと思ってても、間違うぞ!という警告」がテーマではないか、
というところまで、目星をつけることができました。

しかし、現時点では、少し抽象的で、ぼんやりとしているので、
先述した結論である、「ゲームに対する警告」とは言い切れませんね。

次回記事では、
『Braid』の「ゲーム構造の持つ意味」について、詳しく解説しながら、
テーマ解釈を掘り下げ、「より確からしい解釈」に、近づけていきたいと思います。

本作をプレイして、
「このゲーム、なんかマリオっぽい?」と、一度でも感じた、あなた。

……正解です。

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