Braid 考察 -2- Braidの「ゲーム構造」と、「マリオっぽい」理由

  • 2012/06/22 特集

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形態は機能に従う。 -ルイス・サリヴァン-

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今回は、『Braid』の「マリオっぽさ」の理由と、「ゲーム構造」について

前回までの記事で、『Braid』のストーリーは「警告の寓話」だと書きました。
そして、そのままでは、「ゲーム(業界)に対する警告」とは言い切れない、とも。

今回の記事では、『Braid』における「マリオっぽさ」と、「ゲーム構造」について考察しながら、
『Braid』の「警告」が、「ゲーム(業界)に向いている」、と考えるに至った根拠を書きたいと思います。

それでは早速、始めましょう。

スーパマリオブラザーズというアイコン

「世界一売れたゲーム」として、ギネスブックに登録されたこともある
(その後、Wii Sportsが記録を塗り替えたようです)『スーパーマリオブラザーズ』は、
説明するまでもなく、「ゲーム」を象徴する作品と言えるでしょう。

そして、『Braid』をプレイした方なら、デザインのそこかしこに、
『スーパマリオブラザーズ』を思わせる要素がある事に気がつきます。

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プリンセスは、ここにはいないよ

しかし、なぜ『Braid』は、
『スーパーマリオブラザーズ』のデザインを取り入れたのでしょうか。

リスペクトからでしょうか?それとも、オマージュ?インスパイア?

もちろん、いろいろな考え方ができると思いますが、
私は、『Braid』の「マリオ分」は、
「ゲーム構造」と組み合わさることで、「ハッキリとしたメッセージ」を、発している
、と考えています。

詳しくは後述しますが、解説に入る前に、
まずは「マリオっぽい」部分の、おさらいをしてみましょう。

「マリオっぽい」要素、おさらい

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左が、「マリオシリーズ」、右が、『Braid』から引用

画像を御覧ください。

『Braid』の主人公、ティムの姿がおかしな事になってますが、
これは、開発初期段階の、『Braid』主人公グラフィックです。

つまり、
開発段階から、マリオのデザインを取り入れる、という事は決まっていたと推測できますね。
リリース時には、科学者っぽい出で立ちのティム君になりましたが、
よりハッキリと、「マリオ」しているこちらを引用しました。

他にも「城」や、ゲームクリア時に下げる「旗」。
そしてもちろん「プリンセス(ピーチ姫)」、ジャンプして、踏み潰す動作など、
『Braid』には、「マリオ」をイメージさせる要素が、散りばめられています。

さて、問題は、なぜ、「マリオ」を引用したのか、その目的です。

「ストーリーが警告の寓話」で、「ゲームの象徴である、マリオっぽい見た目」という理由から、
「ゲームに対する警告」と言えなくもないでしょう。

ただ、もう少し「ふかぼり」して、説得力を増すことができると、私は考えています。

そのために、ゲーム構造に着目します。

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ドンキーコングを思わせる画面も

Braidは、時を巻き戻せて「いない」

『Braid』と、『スーパーマリオブラザーズ』は、
どちらも似たようなアクション(パズル)ゲームです。
敵を踏んづけて、とにかく右に向かって進めばいい。

大きな違いは、『Braid』の主人公は、時を操れる、ということです。
そして、ゲームのパズルは、その能力なくしては成り立ちません。

しかし、よく考えてみると、実は、ティムは時を操れていないようにも思えます。
つまり、
本当に過ちを償いたいのであれば、「過ちを冒す以前」に、時を巻き戻せば良いはずです。

でも、このゲームでは、それはできません。

隠し要素である「星」を全て集めたとしても、
このゲームでハッピーエンドを迎えることはできません。

これはなぜでしょうか。
大きくとらえれば、『Braid』は、時を巻き戻せないゲームだから、です。

Braidのラスト付近、プリンセスがティムの邪魔をしようとしているシーン

何度やっても、プリンセスは救えなかった

Braidの、方向

ラスト付近の、衝撃的なシーンを思い出してみましょう。

プレイヤーがプリンセスを助けにいっているつもりだったのが、
実は悪者は自分だった、とわかる、あのシーンです。

プリンセスの近くまでたどり着き、「巻き戻しボタン」を押すと、真実が明らかになりました。
言い換えれば、
「時間を巻き戻していると、思っている時」に、「時間は、正方向に流れていた」。

つまり、マリオっぽいヒーロー気分で、右へ右へと進んでいたプレーヤーは、
ゲーム全体を通じて、逆方向に、反対に、間違った方向に、進んでいるのです。

ティムは、時間を巻き戻しているわけではなく、単に「逆行」しているのです。

WORLD 1
「ティムのような人は、一般的な街の人たちとは反対の生き方をしているらしい。」
「世界は彼と逆の方向に流れている。」

Braidのゲーム構造は、「逆マリオ型」である

同じ方向に進んでいるように見える『スーパーマリオブラザーズ』と『Braid』は、
よく考えれば、真逆の方向をむいていることがわかります。

以下に簡潔にまとめてみましょう。

『スーパマリオブラザーズ』
・右に進んでいく
・ピーチ姫を助けて、ハッピーエンド 
・エンドを迎えて、ゲームは終わる

『Braid』
・右に進んでいるつもりだが、実は逆行している
・実は悪役は自分で、プリンセスはプレーヤー(ティム)から逃れようとしている
・エンディングはなく、ゲームは終わらない(明示的な「終わり」が存在しない)

つまり、『Braid』のゲーム構造は、
全体を通して、「マリオ的な要素」を積極的に取り入れ、それを全くの逆方向にひっくり返した形
言ってみれば、「逆マリオ型」である、と言えるのです。

『Braid』は、「マリオ」の逆を向いている

マリオの反転構造=自己批評性の表明

例えば『MOON』というゲームは、「戦わないこと」で、ゲーム(RPG)を批評しようと試みた作品です。
つまり、「反対のことをするゲーム作品」によって、意見を表明している。

『Braid』も、その「マリオ反転構造」によって、
「ゲーム(業界)批評的」な立場を、プレイヤーに伝えているのです。

私が、「Braidの警告はゲームに向けられている」、と断言する根拠は、こういった理由からです。

プレイヤーはゲーム全体を通じて、間違った方向にすすんでいる事を、(あのシーンまで)自覚できません。

ゲーム内の、「女の子を守ろうとするティム少年の、ひとりよがりな思い」と、
ゲームを遊ぶ「プリンセスを救うのは自分だ、と思い込んでいるプレイヤー」をオーバーラップさせながら、
同時に「ゲームに対する批評性」を盛り込んだ構造は、お見事という他ありません。

『MOON』は、敵を殺さず、ラブを集める

今回のまとめ

今回はここまでです。
画像を多めにしてみましたが、読みやすくなったでしょうか。

さて、今回の記事で、
「Braidの警告」は、「ゲームに向けられている」、と考えた根拠を書きました。
しかし、根拠は、これだけではありません。
実は、もう一つ、「ポイント」があります。

次回は、「科学」の最大の過ちとも言える「原子爆弾」と、
『Braid』の「テーマ」との、「ある密接な関わり」について書きながら、
その「ポイント」について、明らかにしていきたいと、思います。

「プリンセス=原子爆弾説」が、しっくり来ない方も、
これを読めば、スッキリできるかも、しれません。

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